養育・親子関係

養育とは

子ども達の「保護」は、それ自体として完結しない。その後に始まる「養育」と言う営みの継続に、育みが委ねられているのである。

児童養護施設の子どものケアは、より良き「つながりの契機」を見出す努力を必要とし ている。なぜなら、子どもは傷つき、不安を持ちながらも、安心して自分を委ねられる 「大人の存在」を求めているからである。

保護された子ども達は、不本意ながらも施設で暮らすことを強いられてしまい、集団生活しなけらばならない。また、養育が十分に機能していない環境にいたために大人への不信感があったり、発達の遅れ、消極的かつ自尊心が低く心にネガティブな要素を持つ子どもが多い。家庭から分離され、子どもを取り巻く社会環境や生活環境が大きく変わり絶大なダメージを受けた状態からの養育が始められる。施設での養育は、安定した衣食住の環境を継続的に整え、子ども達が安心して暮らすことのできるよう保証されること、日常的に安定性が連続されていることが必要である。一般家庭とのギャップを埋められるよう季節の行事等を充実に取り入れることも大切に思う。家庭的な養育の実践は、集団生活をする上では線引きが難しいところではあるが、規則や制限で強く縛り付けることは望まれない。ただ、子ども達の生活の場が緩過ぎても子どもの安心を保証することは難しくなると考える為、判断には慎重な配慮が必要だと思う。子どものありのままを受け入れるという観点からも受容と許容のパラドックスを考えるとトライアンドエラーで試行錯誤が繰り返されることだと思う。

交代勤務で毎日大人が変わるという変則的な養育の形に、職員は子どもへのストレスに配慮すべく、正確に連携していく必要性が求められる。そこに大人への不信感を回復させる重要なポイントでもあるように思う。子どものケアにあたって、良い関わりを見出す努力と子どもを診る・傾聴する能力が求められる。子どもの信頼関係を築くにあたっては多彩な関わり方があり、決して言葉だけに依存し、支配的に関わることは望まれない。時には誘導的に関わることがあるかもしれないが、施設での生活の主体は子どもである。一人一人の子どもが自主的に選択でき、意思決定、行動に繋げられるよう、立ち回ることが望まれると考える。子どもの特徴に意識して一人一人のニーズにあうよう関わり方を変える必要もある。個別に養育する上で、子どもが成長し、大人になり、社会に出てた時に自立して主体的に社会に貢献できるような養育を実践できるよう日常の中で心がけることを大切にしたい。

親子関係の理解

子どもは、 施設に入所する前に、 家族との関係があり、 親との関わりがある。 本書からは、親の存在抜きにして、子どもの発達保障や自立支援はあり得ないと考えるべきである。親をこころの中でどう受け止めているかは、個人の在り方に大きく特色づけることになる。 アイデンティティ形成にとって大きな課題。 これらのワードは、子どもにとっての親の存在のがどれだけ重要で、必要であるかが語られている。子どもは親との関わりや養育環境が人格形成に大きく影響する。 そのため、親子の関係回復に向けて双方のケアが重要である。入所前の家族との関係や養育環境は、子ども一人一人異なる。そのため、子どもの家族関係や養育背景に配慮した上で、関わることが子どもが安心して暮らせる場を提供することに求められ、養育していく上でも職員との信頼関係の構築や子どもの愛着形成に影響してくるのだろうと思う。子どもの立場で考えを深め、子どもの背負った心の傷を癒すためにどんな働きかけができるかを考えると、安定した日常の関わりの中で子どもをよく観察し、言動の意味を考えてニーズに向き合い子どものこころに向き合い、対応を重ねてくことだと思う。

施設では、親子関係の回復、家庭復帰に向けて面会や帰省がセッティングされている。毎週、安定した日時で面会を実施できる子どももいれば、子どもの意思で親に会うことを望まないケースや、親の都合上面会や帰省が実現できない子どももいる。家庭復帰を目標に支援していくのか、そうでないのかパターンも様々だ。加えて、子どもは親に対する認識にも差がある中で、その子にとってどんな支援が行われることが最善なのか検討し、悩み試行錯誤を繰り返し支援計画を立てていく必要があり、家庭状況や親子関係の状況に合わせて柔軟に対応していくことが求められると考える。それぞれ家族関係に少々厄介なケースがあるだろう。帰る場所の有無、面会の可不可、家庭復帰の実現性。多くの課題があり、現場職員との日々の連携はもちろん専門職、関係機関との連携が重要になってくると思う。親子関係の回復は、施設での子どもの健全な養育が根底にあり、実現することだと思う。

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